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Scientists × Communicators:科学と社会をつなぐ「キャリブレーション」という実践
こんにちは🎅
今回は、2025年 12月3日、パシフィコ横浜にて開催された2025年度分子生物学会でのフォーラム、「Scientists × Communicators:生物学研究と社会をつなぐ、多様なカタチ。」についてレポートします。
本フォーラムでは、研究者、学生、行政や広報の立場の方など、多様な背景をもつ参加者が集いました。
🔻フライヤー:
https://iblab.bio.nagoya-u.ac.jp/pdfs/event/20251203.pdf

科学と社会をつなぐ、さまざまな「接続」のかたち
今回のフォーラムには、 研究・教育・メディア・デザインといった異なる領域から、 科学コミュニケーションの最前線で活動するパネリストが集いました。
本田 隆行さん(フリーランス・サイエンスコミュニケーター) 、桝 太一先生(同志社大学・ハリス理化学研究所 助教) 、有賀 雅奈先生(筑紫女学園大学・サイエンスイラストレーター) 、渡辺 諒さん(毎日新聞社 記者) 、内田 麻理香先生(東京大学 教養学部附属教養教育高度化機構 特任准教授) をお招きしました。
それぞれが異なる立場にいながらも、 「科学をどう社会と接続するか」という問いのもとに集い、 多層的な視点が交差する時間となりました。
まず冒頭、内田先生から語られたのは、「液体=科学、土地=社会」という印象的な比喩でした。
科学はそのままでは流れていかない。 土地の性質に応じて、染み込み方は変わる。 科学コミュニケーションとは、その両者をつなぐ存在であり、その「つなぎ方」は多様である。
この導入が、本フォーラム全体の議論の土台となり、各パネリストの具体的な実践方法の紹介に移りました。
「誰が・何を・どのように伝えるか」で姿を変える営み
科学コミュニケーションとは、「誰が、何を、どのように伝えるか」によって姿を変える営みです。
研究成果を“原液”のまま届けても、必ずしも社会に浸透するとは限りません。
希釈の仕方、言葉の選び方、文脈の与え方によって、その意味は大きく変わります。
議論が進むなかで見えてきた共通点は、「俯瞰する視点」の重要性でした。
自分の専門の内側だけでなく、その外側にまで視野を広げる力。
それこそが、科学コミュニケーションの核にある姿勢なのだと、改めて感じました。
多様な参加者、多様な関心
今回の参加者は、研究者に限らず、約4割が大学生・大学院生という構成でした。
また、広報担当者や行政関係者の姿も多く見られました。
アンケートでは、92%の方が「大変満足した」 「参加前より科学コミュニケーションに興味が湧いた」
と回答しています。
特に印象に残ったキーワードとして多く挙げられたのが、「フレーミング」と「キャリブレーション」 でした。
フォーラムそのものが「実践の場」に
本フォーラムでは、Slidoを活用し、 参加者から寄せられた具体的な悩みや疑問を拾い上げながら議論を進めました。
研究発表やアウトリーチに限らず、 日常の中にある「伝わらなさ」や「もどかしさ」を共有し、 そこから研究者・学生・社会の側が視点を持ち寄る。
このフォーラム自体が、 「場としての科学コミュニケーションの実践」 を体現していたように思います。
感覚をキャリブレーションし続けるということ
議論は次第に、「感覚をキャリブレーションし続けること」の重要性へと広がっていきました。
キャリブレーション(calibration)は本来「調整」を意味する言葉ですが、心理学の文脈では、相手の表情、視線、姿勢、声のトーンといった非言語的手がかりを手掛かりに、相手の感情や内的状態を推定し、自身の反応やコミュニケーションの取り方を微調整する能力を指します。
単に感情を「読み取る」ことではなく、相互作用の中で理解をすり合わせていく動的なプロセスである点が特徴です。
・おばあちゃんに研究の話をしてみる
・まったく分野の違うパートナーに話してみる
・いろいろな場で、いろいろな人と話してみる
こうした行為は、単なる説明練習ではありません。
相手の関心を理解しようとする姿勢そのものが、異分野融合の本質であり、自分自身の俯瞰性を育てる営みでもあるのだと感じました。
参加者の声から
アンケートには、次のような感想が寄せられました。
「研究者が『!』を持ち、受け取る側が『?』を持っている。
それが合致したときに、科学コミュニケーションがうまくいく、という話が腑に落ちた。」
「こんな例えで伝えられること自体が、歩み寄ってコミュニケーションを取れている証拠だと思った。」
「申請書作成や指導教員との議論も、科学コミュニケーションだという視点は新鮮だった。」
構想段階から活発な議論が交わされたこのフォーラムは、コミュニケーションそのものに立ち返ることを私自身に示してくれた場でもありました。
改めて、「科学コミュニケーションとは?」
最後に改めて問いかけられた「科学コミュニケーションとは何か?」という問い。
冒頭では「YouTube」「実験教室」など、具体的な手法や場が多く挙がっていました。

しかし終盤には、「思いやり」 「人と人がつながること」
といった、コミュニケーションの本質に立ち返る言葉が溢れていました。

実は当初は、「多様性」にフォーカスして締めることを想定していましたが、この変化そのものが、私にとって大きな示唆となりました。
科学コミュニケーションは、決して特別な試みでも、固定的な何かでもなく、人と人が関わるあらゆる場に、すでに存在しているものなのだと思います。
今回、このフォーラムを企画できたことに、心から感謝しています。
さまざまな人がつながる「場」や「対話の設計」から、多くを学んでいきたいと思います。
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