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4月iSeminar × 寄生蜂毒!
こんにちは🌸
今回は、4月18日に開催された、異分野融合研究セミナー(iSeminar)についてです!
【寄生蜂毒:宿主を巧みに操る物質の作用機序と進化】というテーマで、丹羽 隆介 先生(筑波大学 生存ダイナミクス研究センター 生理遺伝学研究プロジェクト 教授)にご講演いただきました。
さらに今回は、名古屋大学とZoomのハイブリッド開催で、アドバンス生命理学特論を兼ねています。オンライン参加者は70名、現地参加は60名程度で、合計130名近くの人にご参加いただきました。
寄生蜂とは、ハチ目昆虫のうち、寄生生活の時期をもつ種の総称です。
蜂というと、花蜜を集めるミツバチや、他の虫を捕食するスズメバチなどが身近かもしれません🐝
しかし、ハチ目全体(約15万種!)を見渡したとき、彼らのような生活様式は多数派ではなく、約半数の蜂は、捕食寄生という生活様式を持っています。
寄生蜂は、節足動物(昆虫、くも、ダニ)や植物などに寄生するそうです。
丹羽先生は、よく「なんで寄生蜂なんてマイナーな生物を研究するの?」と質問されるそうですが、マイナーという理解がそもそも違っていて、種数からも、生態学的インパクトからも、むしろメジャーな存在だ、と説明されていました。
地球上では、種数のうち昆虫が6割を占めており、さらにその20%程度は寄生蜂グループ!😲
生態学的インパクトという面では、野外に住む昆虫の相当数は寄生蜂に感染されているそうです。
ではなぜここまで繁栄しているかというと、寄生蜂は宿主をいろんな意味でコントロールできるからだそうです。例えば、宿主に打ち込まれる毒などが、その宿主の行動を制御しているんだとか。
講義の中で例として挙げられていたエメラルドゴキブリバチ(宝石バチ)は、宿主であるゴキブリに毒を注入することで行動制御をするそうですが、この動画はかなり衝撃的でした…。
(漫画「テラフォーマーズ」の、毒を注入してゾンビ化させるヴィクトリア・ウッドの性能にも納得しました😂)
▶︎「ゴキブリをゾンビ化!「エメラルドゴキブリバチ」の寄生サイクル」
▶︎「ゴキブリをゾンビ化する寄生バチの毒を特定ドーパミンと併存、パーキンソン病の治療に役立つ可能性も」
さて、このような寄生蜂において、注入する物質の同定は比較的進んでいるそうですが、一方で、なぜその物質が打ち込まれると宿主の行動などが変わってしまうのかについて、分子レベルでは未知な部分が多いそうです👀
丹羽先生の研究はここにアプローチするものなんですね。
研究の材料として、寄生蜂の宿主には、モデル生物である「ショウジョウバエ」を選択しており、この理由には寄生の成功率が90パーセント以上という高さで安定していることや、単為生殖系統であることなども魅力だそうです。
講義では、「飼い殺し寄生」の成功に必須な毒の同定への道のストーリーにも触れられ、研究グループの長年にわたる「力技」的な努力の賜物であったそうです。
特に、のべ数千匹の蜂(!)をすりつぶし、分画し、活性成分を取りに行った4年間の挑戦があったというエピソードが印象的でした。この挑戦は失敗するも、その後、文科省の先進ゲノム支援のプラットフォームでの取り組みによって、日本アソバラコマユバチの全ゲノム解読や遺伝子予測を行うことができたそうです。
もう一つ面白かったのは、丹羽先生が寄生蜂研究をはじめたきっかけです。
過去に丹羽先生が参加された学会で、お目当ての講演を聞いた後の、いわば満足しきった状態でたまたま耳にした次の講演で、「ショウジョウバエに寄生する寄生蜂がいる」という事実にふと好奇心を抱いたそうです!
「研究の種はどこに転がっているかわかりません」と、丹羽先生。
初めて寄生蜂の世界についてお話をお伺いしましたが、大変刺激的な講演でした✨
ありがとうございました!
iSeminarは今年度で4年目に入りました。
今年度も「異分野融合研究セミナー」の名の通り、さまざまな研究分野の先生をお招きし、専門外の人々が気軽に新たな世界を覗き、知ることができるオンラインセミナーとして、毎月開催していきます!
まさに思わぬ発見と興味の種に出会える場所として、さらに多くの人の目に留まっていくと良いなと思います。
5月度は、「リボソームプロファイリングの最新技法」というテーマで、岩崎 信太郎 先生(理化学研究所 開拓研究本部 岩崎RNAシステム生化学研究室 主任研究員 東京大学 新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 客員准教授 )をお招きします。
次回以降も、さまざまな人の参加をお待ちしております!🙌
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