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細胞に“記憶”を与える!?

こんにちは✨ 今回は、University of British Columbia(UBC)と大阪大学を拠点に活躍されている 谷内江 望先生 をお招きした、4月のiSeminarについてお届けします!
【遡る生物学】
谷内江先生が提案するのは、「細胞の中に記憶媒体=DNAベースのビデオカメラを埋め込む」という、まるでSFのような研究。
通常、生物の発生過程は“スナップショット”のように一瞬の状態しか観察できません。
しかし谷内江先生は、細胞が経験した出来事(分裂・環境変化など)をDNAに記録するというアプローチをとって、まさに“細胞の人生”を丸ごと記録しようとしているのです。
研究では、CRISPR技術を用いて細胞が分裂するたびにランダムな変異がDNAに蓄積されていくシステムを構築。これにより、
どの細胞がどの細胞から分裂してきたのか
それぞれがどんな体験をしてきたのか
といった“細胞の系譜”が再構成できるようになります。
しかも、レアな細胞も見逃さない新しい計算手法により、膨大な細胞データを効率よく解析!
この研究を支えているのが、1億個以上のDNA配列から系統樹を再構成できる超分散コンピューティング技術「FRACTAL」。
この名前の通り、データ構造も分岐の形も“フラクタル的:細胞の分裂やクラスタリングの構造が“入れ子状”や“繰り返し構造”になっている様子”に階層的クラスタリングされています。
この技術は、シングルセルRNAデータにも応用できるため、細胞の分化パターンや疾患状態の把握にもつながる可能性があるとのこと。
後半では、細胞の中で特定の遺伝子が発現した時だけゲノム編集が可能になる技術も紹介。
この発想により、「どのタイミングでどの遺伝子が働いたか」を細胞の“記憶”として残せるセンサーの開発が進められているそうです。
谷内江先生は、「僕の研究じゃなくて、“みんな”の総力戦」と締めくくられていました。
研究室のメンバー、国内外のコラボレーター、そして学生の自由な発想が融合し、“生きている時間そのもの”をデータに変えるという研究が、いま少しずつ現実になろうとしています。
🔗 谷内江先生の連載もチェック!
実験医学で連載中の「アカデミアの泳ぎ方」シリーズでは、論文・グラント・カバーレターの書き方まで解説されているとのこと。 SNSではちょっとした炎上(!?)もあったようですが、「未来の若手研究者たちのために」と真剣に執筆されているそうです。必読!
「生命とはなにか」を根本から見直す研究に、リアルタイムで触れられるのは本当に貴重な体験ですね。
iBLabでは今後も、こうした最先端セミナーの情報を発信していきます✨
興味のある方は、ぜひ各種SNSもチェックしてください!
🔻iSeminarウェブサイト: https://iseminar.weebly.com/
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