NeoMESeminar
ネオMEセミナー

ネオMEセミナー(2023年12月11日13時30分〜)

NeoMESeminar

日時:

2023年12月11日13時30分〜15時00分(日本語)

場所:

名古屋大学理学部E館E131

対象:

大学などの研究機関および研究に関連する会社等で従事されている方

参加登録:

不要

講演者:

姫岡優介
東京大学大学院理学系研究科生物普遍性研究機構

演題:

大腸菌代謝動力学モデルの摂動応答性

要旨:

大腸菌などの微生物を対象としたシステム生物学はこの数十年で、富栄養環境下・指数関数増殖期にある細胞集団については、成長速度-リボソーム量関係式・フラックスバランス解析・細胞サイズコントロールなど、様々な数理的法則を見出してきた。しかしその一方で、ストレスフルな環境や大きく変動する環境下での微生物生理学については分かっていないことが多い。様々な実験によって、上述のような環境における細胞生理学は極めてダイナミックであることが分かっているが、近年までに発展してきた微生物細胞生理学の理論は細胞内部状態の定常性に拠ってたつものである。したがって、従来の手法を拡張するだけでは富栄養環境下以外の微生物生理学を理論的に理解することは難しく、ダイナミクスに着目した新たな理論的フレームワークの発展が必要である。

そこで我々は大腸菌の代謝動力学を理解するための第一歩として、代謝ダイナミクスが代謝物質の濃度への摂動に対してどのように応答するかを複数のモデルを用いて調べた。その結果、大腸菌代謝反応動力学モデルは代謝のトイモデルに比べて、代謝物質の濃度への摂動に対して大きな応答を示すことが分かった。加えて、モデルによっては代謝物質濃度の摂動は「休眠状態」と呼ばれる大腸菌の成長停止状態の振る舞いと似た、非常に遅い緩和ダイナミクスを引き起こすことも明らかとなった。モデル縮約やネットワーク拡張などの手法を用いて代謝モデルを改変することにより、代謝モデルの持つ強力な応答性にはATPやADPといった補酵素や、代謝ネットワーク構造の構造が重要な役割を果たしていることが明らかになった。

本講演ではこれらの結果を紹介し、微生物細胞生理学との関係を議論したい。また、時間があれば更に強力な摂動によって引き起こされる「細胞死」様の性質についても触れたい。

関連リンク

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https://iblab.bio.nagoya-u.ac.jp/about/activities