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異分野融合生物学って何? × ムーンショット型研究開発制度

こんにちは🌤

もうすぐ、iBLab(異分野融合生物学研究室)も1周年を迎えます。早いですね!

今回は「異分野融合」について考えていきます。

iBLabの名前の由来にもなっている、「異分野融合生物学」。

改めて考えてみると、どんなことをしているのかピンとこない方も多いのではないでしょうか🤔

それもそのはずで、異分野融合生物学という分野は新しく作られたもの。iBLabは日本で初めての異分野融合生物学研究の拠点なのです。

iBLabで実践されている「異分野融合生物学」は、数学を中心とする様々な分野と生物学の融合を目指しています。

たとえば、数理モデルとコンピュータシミュレーションを使用して複雑な生命現象を捉え、理解しようという試みをおこなっています。

さらには、全国各地のさまざまな専門家と繋がることで、さらに新しい視点を融合させた生命科学研究に発展させていこうとしています。

そのためにiBLabでは、全国の他分野の研究室と人材ネットワークを測る「クロスラボ」という体制や、異分野融合セミナー(iSeminar)の定期開催など、多様な専門家との連携、協働を重視しています。

では、なぜ今「異分野融合」なのでしょうか🤔

そもそも異分野融合“interdisciplinary”というと、「2つ以上の学術的、科学的、または芸術的な分野を含むこと」と定義されます[1]。

この異分野融合という言葉自体が、アカデミアの世界で注目されるようになったのはまだ日が浅く、日本では2010年台からのようです。

ちなみに、2018年にJST/CRDSが注目する12の異分野融合領域・横断テーマ「Beyond Disciplines」には、異分野融合について以下のように記述されています。

世界は今、VUCA 時代(Volatility/ 不安定、Uncertainty/ 不確実、Complexity/ 複雑、Ambiguity/ 曖昧) といわれるほど、変化の早い・複雑で予測しにくい時代に入っている。一つの方向に、一つのやり方 で進むことは、多様性と対応力が求められる現代ではリスクとなった。多様化・複雑化する社会にあっ て、人類・社会に求められる、または問題とされる事象の多くは、例えば SDGs がまさにその象徴で あるが、歴史的な学問・学術の体系にもとづく深く専門・細分化された単一分野では面的に向き合う ことが難しくなっている。このことは、1,000 以上もの学会組織が存在するといわれるわが国では、 他の主要国に比して特に顕著なようである。科学技術が現代の様々な問題と向き合うには、これまで 個々に発展してきた学問体系を越えて新しい分野を定義し取り組む、または複数分野の連携により新 たな融合領域を生み出して取り組むことが求められる。そうすることにより、既存分野において新た な発見・進歩が誘発されることも期待できる。  

異分野融合と聞いて、ぱっとイメージしやすいのは「文理融合」ではないでしょうか。最近では教育機関でも、データサイエンスや社会環境学など、文理横断的な学問が台頭してきました。

従来「理系」とされている学術領域においては、現象の解明やシステムの構築など、論理性と合理性に基づいて解を求める取り組みが一般的です。

一方、政策決定や紛争の解決、企業経営などにおいては、共有し尽くせない多種多様な価値観ゆえに、集団合意の形成をしていくためのモデルが必要とされます。

どのように解決していくかの問題意識と視点が異なるからこそ、文理融合が必要とされてきた経緯があります。

他にも産学連携や、ビジネスにおける異業種交流など、共創の潮流が活発化している背景には、コモディティ化からの脱却を余儀なくされ、イノベーションが行き詰まっている現実的な実感もあるようです。

こうした視点から「異分野融合」を捉えると、iBLabが捉える「研究室」という場所もまた、学術的な専門性の深化のみを意味しません。

知識の融合はもちろんのこと、さまざまな分野の人々が持つ各々の常識や価値観、思考をつなぐプラットフォームとしての一面が見えてきますね。

iBLabは1周年を迎えた今、1年前と比べて、10名以上メンバーが増えました。

どんな研究室になっていくのか、ますます楽しみです😀

  

さて、イノベーションの話が出ましたが、皆さんは「ムーンショット型研究開発制度」をご存じでしょうか。

日本発の破壊的イノベーションの創出を目指すこのプロジェクトは、現存する重大な社会課題を、科学技術により解決していくことを目標としています。

例えば、少子高齢化の進行や大規模自然災害、地球温暖化問題などなど…どれも一筋縄ではいかない問題がターゲットとなっています。

2050年までに達成すべき挑戦的な目標を7つ定めており[2]、それぞれの中に複数のプロジェクトが含まれるという、階層的・異分野横断的な特徴があります。

(詳しくはこちらから:https://www.amed.go.jp/content/000086677.pdf

 

実際にiBLabが関わるのは、目標2。

「2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現」というテーマです。

超早期に疾患の予測・予防…ってどういうこと?🤔って思いますよね。

病気というと、具合が悪くなり、医者に「病気です」と診断されてから治療がスタートしますね。ここには、「治療というのは病気に罹った後に行うものである」という前提があります。

しかし、この目標2のプロジェクトでは、病気の発症前の状態(「未病」と名付けられています)を明らかにし、「病気を発症する前に」健康状態に引き戻すための研究開発を進めているのです。

そんなことができるの!?とびっくりする方も多いのではないでしょうか。

このプロジェクトを通して、私たちの病気との付き合い方が一変するだけではなく、介護やヘルスケアといった社会生活における、私たちの「当たり前」も変わっていきそうですね。

人生100年時代と言われる現代。少子高齢化も加速する社会が直面する課題に直結するプロジェクトであることがわかります。

このプロジェクトでは、「バイオと数理の融合」が一つの鍵となっている点にも注目です。

異分野横断・異分野融合(両者は厳密には区別されます)によって新しいものの見方ができるようになり、またそれがパラダイムの鍵として促進されるプラットフォームとなっていることがわかります。

今後はこのムーンショット計画の経過をチェックしていきたいと思います✨

来年度のiBLabもよろしくお願いいたします😄

 

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[1] Merriam Webster Dictionary

[2] https://www8.cao.go.jp/cstp/moonshot/index.html